Mizuoの日記

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【書評】レベッカ・リーブ「~編集者のように考えよう~ コンテンツマーケティング27の極意」

 

~編集者のように考えよう~ コンテンツマーケティング27の極意

~編集者のように考えよう~ コンテンツマーケティング27の極意

 

 

電通報見てたら、電通のiPR局(ソーシャル関連のPRに特化したチーム)が翻訳したこの本が紹介されていて、面白そうだったし今の仕事にも役立ちそうだったので読んでみました。

 

コンテンツマーケティングという言葉の生みの親であるレベッカ・リーフによると、コンテンツ・マーケティングとは「企業がコンテンツを用いて自社の商品やサービスを、消費者や見込み客に売り込む為」の手法であり、「消費者が必要だと探しているときに、信頼できて、わかりやすく、役に立ち、思わず注目したくなり、魅力的で、面白い情報がそこにあるという状態にすること。つまりは、引きつける戦略のことだ」と語っています。

 

「コンテンツ・マーケティング」というと新しいマーケティング手法というイメージしがちですが、その概念自体は決して目新しいものではないとリーブ自身が指摘していますし、デジタルな要素を抜きにしたら確かに昔からあるもんだなあと(出版業界だってそうですよね)。

それを何故今改めて定義付けたかというと、発信ツールが急速に普及し、誰でもメディアになり得る今、あらゆるメディア、デジタルチャネルを使って人々を引きつけるコンテンツを作ることの重要性が高まってきたから、というわけです。

新聞やTV、雑誌などの既存のメディアの影響力が衰えてきたことも大きな要因のようです。

 

タイトルに「27の極意」とありますが、ざっくり分けると

 

・コンテンツ・マーケティングとはそもそもなんぞや

・コンテンツ・マーケティングのプロになるために経るべきステップ

・アメリカ企業のコンテンツ・マーケティングの成功事例

・コンテンツ・マーケティンに利用できるデジタルコンテンツチャネルの紹介

・コンテンツ・マーケティングを行う上での心得

 

について書かれています。

コンテンツ・マーケティング関連についての本は読んだことが無かったのですが(ネットの記事を拾い読みするぐらい)、こういう風に体系立てられたものを改めて読むと自分の知識の偏りや不足部分がよくわかります(ってこの本も全部網羅できてないとは思いますが)。

 

コンテンツ・マーケティングは上にも書いたとおり、消費者を引きつけるプル型の営業手法です。

商品を売るために広告やプッシュ型の営業をゴリゴリ推進するやり方に消費者は辟易し、効果も薄れる一方でもはや時代遅れになりつつあり、消費者が自然と興味を持つ状態を作るにはどうしたら良いのかを企業が考えるようになった。個人的には凄く良い流れだと思います。

企業にとってはコンテンツを作り上げることでブランド力を高めることに繋がり、消費者は自分にとって有用な、あるいは楽しいと感じるコンテンツが増える。

こうなると資金力ではなく、商品や企業のポリシー、企画力がどれだけ消費者に受け入れられるか、というところで勝負をすることになるので、規模は小さくても良いプロダクトを持った企業が台頭しやすくなりますよね。

 

ただコンテンツ・マーケティングに力を入れられるのは、定量化しにくいこの分野に対して人員も費用も割ける、ある程度余裕のある大企業~中規模企業しかできていないのが現状かなと。この書籍で紹介されているのもおしなべて国際的に名の知れ渡っている企業ばかりでした。

 

低コストで運用できるデジタルチャネルを利用する現代のコンテンツ・マーケティングは中小企業こそ活用するべきだと思うのですが、活用できる体力が無いとどうしようもないですよね。リーブもできるだけ人員割いたほうが良いと書いてるし…。

逆に大企業は既にコンテンツ・マーケティング行ってるところがほとんどだし、少ない人員でできる方法が書かれていたら良かったなあと思いました。

 

あと不満を挙げるとすれば、編集が若干雑です。

原著が発売されたのは2011年。日本語訳の本著が発売されたのは2014年1月。約3年のタイムラグがあるわけですが、その間に起きた変化についての説明が全く入っていないのは残念でした。

 

例えば、「Posterous(ポステラス)」というTumblrのようなブログプラットフォームがデジタルコンテンツチャネルの1つとして紹介されていましたが、このサービスは2013年3月に終了しています。でもサービスが終了したという追記も脚注も一切ありませんでした。

 

また、オンラインディレクトリサービス(サイトをカテゴリ別に分けて探しやすくするサービス)はメリットしか無いのでどんどん登録したほうが良いという記載がありましたが、2011年当時はそれでも良かったと思うのですがGoogleが複数のディレクトリサービスに対して有料リンクを販売していると指摘し、警告を出したのがの昨年10月(詳しくはこちらでどうぞ)。これも編集段階で気付けたはずです。

SEOについてよく調べている人にとっては常識ですが、この事実を知らない人がこの本を読み、そのまま鵜呑みにしてディレクトリサービスに登録してしまうっていうのは十分あり得ます。そこは何かしらの解説を付けてほしかった。

 

とはいえ、これからコンテンツ・マーケティングを始めようと考えている人は、基礎は学べるので一度読んでみても良いかもしれません。

まあでも結局、コンテンツ・マーケティングを成功させるためには良いアイデアと良いコンテンツを作るしか無いんですけどね…

 

 

~編集者のように考えよう~ コンテンツマーケティング27の極意

~編集者のように考えよう~ コンテンツマーケティング27の極意